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 柔らかな指先



秋が過ぎ去りそうな街を歩く。
その脇にある銀杏ははらはらと落葉していて、都内でも秋と言うことを感じさせてくれた。
そうっと服の上から自分の二の腕に触れた。 まだうっすらと残っているタイムリープの数字。
ああした事に後悔はない。
けれど時々や1人になると千昭を想って切なくなる。
受験がもう少しで差し迫ってるから??
こういう季節だから??

「魔女おばさんは、そう思うことってないの?」
魔女おばさんのお家。
あたしはソファーに座るよう促されたけど、気が逸って浅く浅く前のめりになる。
「そうねぇ」
背を向けてキッチンでティーカップをお盆に載せている 魔女おばさんはいつものように穏やかだ。
あたしの他に唯一タイムリープをしっている魔女おばさん。
こういう話題は、なんでだろう、魔女おばさんが最適だと思ったんだ。
功介でも友梨でもダメだと思った。
グチを聞いて貰って、いつもの助言が欲しかった。
「だって! 好きな人とそばにいれないんだよ!?」
「時の流れが違うもの」
「そうだけど…」
あたしは口を尖らせた。
「仕方ないのは分かるけど!」
「はい、紅茶」
魔女おばさんはコトンとあたしの前のテーブルにティーカップを置いた。
匂いがふんわりと漂ってくる。
それは香りふくよかなローズティー。
個人経営の紅茶専門店が配合したお茶だそうで、とってもいい香りだ。
「ありがと」
一応礼を言って。でも今はどうでもいい。
「あたしの触ったものが、あたしが生きてく未来が千昭の未来に繋がってるのは分かるけど!」
「うん」

「隣に居ないんだもん……」
気分と一緒に目線も落ち込む。
「そうねぇ…」
ティーカップを持ったまま、おばさんは座った。
あたしは太ももとくっつきそうな胸のまま、上目使いに見上げ。
「私はそういう事は無かったわね」
「えー!? そんなー!」
あたしはガバッと起き上がった。
おばさんは衝撃もないように、淡々とティースプーンを回す。
「だって……。
時をこえてくるなんて、私達には有り得ないでしょう。
確かに今の常識でははかれない不思議な時間的事件っていくつか事例があるけれど」
魔女おばさんは紅茶を少なめに一口飲んだ。
「それを考えたら、私の死んだ後に生まれた人でも会えて良かったって思うの」
「そりゃ会わないよりはいいけど」
あたしは口先を尖らせ。
「だから待つの」
「おばさん……」
「いつか会えるってそう信じてるから淋しくないわ。私には思い出があるもの」
「……」
あたしは考え込むようにむぅっと眉を寄せ。
「真琴は思い出だけじゃ足りない?」
「…………うん、足りない……」
ボソッと喉奥から出すように呟いた
「真琴は生きてる今を一緒に生きたいのね。一緒の未来が欲しいのね」
「欲しい」
未来に届ける気持ちもある。
でも、一緒に居たい気持ちもある。
二つの相反するこころがグルグル回ってて。
「けど、ムリだから頑張るって決めた。そうすれば大切な気持ちは伝わるから」
「ええ、そうね」
テーブルに自分のティーカップを置いた魔女おばさんは、立ち上がってあたしの隣に座った。
「私には何も言えないわ」
魔女おばさんは静かにあたしの頭を撫でる。
「助言してくれないの?」
それを期待してきたのに。
「私は楽に今の気持ちに落ち着いてるの。
自分で自分の事を冷静に整理するのは馴れているから」
魔女おばさんはあたしの頭を撫でた。
「真琴と正反対の私から『気持ちを落ち着かせて』と言うのは簡単だけど、
……でも。考えも気持ちの整理も真琴なりのものがあるでしょう?」
「魔女おばさん……」
「だから、言えるのは励ましだけ」
もう一度ゆったりとあたしの頭を撫で下ろし。
「がんばれ、真琴」
更にもう一度。
そうして魔女おばさんは、静かに花のような笑みを浮かべた。
「頑張って、乗り切って」
「……うん。うん」
どうしよう、涙が出そう。
助言とかグチをって思ってたけど、こういう風に励まして欲しかったんだって今気付いた。
「好きなだけ、泣きなさい」
魔女おばさんの手につられて、あたしは魔女おばさんの膝に顔を伏せた。
「本当は男の人の役目なんでしょうけど」
「あたしにはムリ。おばさんだけだよ」
「こういう役目が特権っていうのは嬉しいから、膝、貸してあげる」
茶目っ気たっぷりな声が耳を撫でた。
「真琴」
穏やかな慰め。
しゃくりあげる息が止まらない。

千昭に絵を届けるって意気込んでる。今も頑張ってる。
1年も一緒に居なかったけど、ずっと一緒に居た。
ふざけ合った放課後。遅刻しそうになって軽い言い合いになった朝。
居ると思って、ふと考えてみれば隣に居ない喪失感。
そりゃ功介はいるよ。幼馴染だから。

千昭。
アンタが隣に居ない事が、とてもさびしい。
やっぱり隣に居るのは千昭がいい…!

あたしは魔女おばさんの膝で子供のように泣いた。

それでも。
きっとこれっきりだから。
千昭を想って泣くのはこれで最後。
明日からは千昭の未来へとんでいくから。
いつものように元気なあたしで。
だから、千昭。

今だけ。

今だけ、許して。


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魔女おばさんが、スマートにレズってますよ!(爆笑)
自分で書いておきながら「魔女おばさん×真琴」が頭に浮かんだ……
そして気分は撃沈(笑)実はこれ、続きます。


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